令和3年(2021年)4月から常時雇用する労働者数が301人以上の企業で正規雇用労働者の中途採用比率の公表が義務化されます。
リーフレットとQ&Aが公表されましたが、対象事業所は、Q&Aで詳細を確認するのがおすすめです。
・いつまでに
・どのような方法で
等の対応が求められますので、方針を検討しましょう。
【制度概要・定義】
Q1 正規雇用労働者の中途採用比率の公表の趣旨・目的について
A 本制度は、労働者の主体的なキャリア形成による職業生活のさらなる充実や再チャレンジが可能となるよう、中途採用に関する環境整備を推進することを目的としている。
Q2 対象となる企業の範囲と、具体的な義務の内容について
A 常時雇用する労働者が 301 人以上の企業においては、各事業年度に1度「正規雇用労働者の採用者数に占める正規雇用労働者の中途採用者数の割合」を公表することが義務付けられる。
【「中途採用」について】
Q3 「中途採用」とは、どのような採用を指すのか
A 「中途採用」とは、「新規学卒等採用者以外」の雇入れを指す。
「新規学卒等採用者」とは、新たに学校・専修学校を卒業した者、職業能力開発促進施設(職業能力開発校、職業能力開発短期大学校、職業能力開発大学校、障害者職業能力開発校)、職業能力開発総合大学校の行う職業訓練を修了した者又はこれに準ずる者(※) であることを条件とした求人により雇い入れられた者をいう。
※ 「これに準ずる者」とは、既卒者であって、新規学卒者と同じ採用枠で採用した者等、新規学卒者と同等の処遇を行う者を指す。
Q4 高年齢者雇用安定法上の継続雇用制度におけるいわゆる「再雇用」労働者は、どのように取り扱うのか
A 高年齢者雇用安定法上の継続雇用制度におけるいわゆる「再雇用」労働者については、労働者の募集に対する採用とは異なる性質のものであり、中途採用として取り扱わない。
Q5 雇用している非正規雇用労働者を、正規雇用労働者に転換した場合は、どのように取り扱うのか
A 例えば、契約社員として契約後、正規雇用労働者に転換した場合などは、正規雇用労働者に転換した事業年度における中途採用として取り扱う。
Q6 グループ会社等から転籍や出向してきた場合は、どのように取り扱うのか
A 転籍や出向については、転籍先・出向先の事業主における中途採用として取り扱わない。
【対象となる事業主】
Q7 「事業主」とはどのような者を指すのか
A 「事業主」とは、国及び地方公共団体以外の労働者を雇用して事業を行う全ての事業主を指し、個人事業主にあってはその事業主個人、会社その他の法人組織の場合はその法人そのものを指す。したがって、独立行政法人、国立大学法人、大学共同利用機関法人及び地方独立行政法人は事業主に該当する。
Q8 「常時雇用する労働者」とはどのような者を指すのか
A 「常時雇用する労働者」とは、雇用契約の形態を問わず、事実上期間の定めなく雇用されている労働者を指すものであり、次のような者は常時雇用する労働者となる。
① 期間の定めなく雇用されている者
② 一定の期間を定めて雇用されている者であって
• 過去1年以上の期間について引き続き雇用されている者又は
• 雇入れの時から1年以上引き続き雇用されると見込まれる者
Q9 「日本企業の国外にある事業所等において雇用される者」や、「学生アルバイト」は、「常時雇用する労働者」に含まれるのか
A 法は、日本国内にある事業所のみに適用されるものである(属地主義である)ため、国外にある日本企業の支店・出張所等や、日本企業の国外の現地法人の事業所には、法の適用はされない。したがって、日本の企業の国外にある事業所等において雇用される労働者は、「常時雇用する労働者」に含まない。
また、学校教育法第1条にいう学校の学生、生徒であって、通信教育を受けている者、大学の夜間の学部及び高等学校の夜間又は定時制の課程の者以外のもの(昼間学生)については、日常生活の大半は学生として生活し、社会的には学生としての取扱いを受けるのが通常であることにかんがみ、原則として、企業規模の判断基準である「常時雇用される労働者」にカウントされないこととする。
Q10 「常時雇用する労働者」について、在籍出向者は出向元・出向先、いずれの労働者に含まれるか。また、賃金は出向元から当該労働者に支払われる形だが、賃金相当額を出向先から出向元へ「負担金」という名目で別途支払っている場合はどうか。
A 出向中の従業員は、原則としてその従業員が生計を維持するに必要な主たる賃金を負担する企業の常時雇用する従業員として取り扱う。
また、「負担金」等の支払を行っている場合であっても、その労働者に対して現に「賃金」として支払いをしている事業主の「常時雇用している労働者」として扱う。
「負担金」の取扱いについては、通常、負担金等の流れについて把握が困難であることを踏まえたものである。そのため、事業主が、主たる賃金に該当する負担金を支払っていることが証明できる場合については、負担金を支払う事業主の「常時雇用する労働者」として取扱うこととして差し支えない。
【中途採用比率の計算における対象労働者の範囲】
Q11 「正規雇用労働者の中途採用比率」について
A 「正規雇用労働者の中途採用比率」とは、各事業年度に雇い入れた正規雇用労働者数に占める中途採用された正規雇用労働者数の割合を指す。
また、「正規雇用労働者」とは、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成5年法律第 76 号)第2条における「通常の労働者(※)」を指す。
(※)基本的には、「いわゆる正規型の労働者」を指し、社会通念に従い、当該労働者の雇用形態、賃金体系等(例えば、労働契約の期間の定めがなく、長期雇用を前提とした待遇を受けるものであるか、賃金の主たる部分の支給形態、賞与、退職金、定期的な昇給又は昇格の有無)を総合的に勘案して判断するものとする。
Q12 中途採用比率の計算において、公表対象年度の終了時点における内定者は、どのように取り扱うのか
A 「公表対象年度の終了時点において雇用が開始されていた者」のみを中途採用比率の計算に含め、内定者は計算に含めない。
Q13 中途採用比率の計算において、公表対象年度の終了時点において試用期間中である者は、どのように取り扱うのか
A 公表対象年度の終了時点において正規雇用労働者として雇用が開始されていれば、試用期間中の者についても、中途採用比率の計算に含める。
Q14 中途採用比率の計算において、公表対象年度に採用したが、公表の時点ですでに退職している者はどのように取り扱うのか
A 公表対象となる年度内に実際に採用を行い、勤務を開始した者については、公表時点で退職済みであっても、中途採用比率の計算に含める。
Q15 中途採用比率の計算において、副業・兼業している場合は、どのように取り扱うのか
A 副業・兼業を行っている場合であっても、それぞれの事業主において正規雇用労働者として中途採用されている場合は、各事業主の中途採用比率の計算に含める。
【公表の方法等】
Q16 公表はどのようは方法で行うのか
A おおむね1年に1回以上、公表した日を明らかにして、直近の3事業年度について、インターネットの利用その他の方法により、求職者が容易に閲覧できるように行わなければならない。
Q17 法施行(令和3年4月1日)後、初回の公表はいつまでに行えばよいか
A 法施行後の最初の事業年度内に、可能な限り速やかに公表を行うこととする。
Q18 2度目以降の公表はいつまでに行えばよいか
A 前回の公表からおおむね1年以内に、速やかに公表を行うこととする。
Q19 「インターネットの利用その他の方法」の「その他の方法」とは具体的にどのようなものか
A 事業所への掲示や書類の備え付け等による方法とする。
Q20 「インターネットの利用その他の方法」の「インターネット」とは具体的にどのような方法か。
A 原則として自社のホームページの利用等を指す。また、厚生労働省がインターネット上に開設する「職場情報総合サイト「しょくばらぼ」」の利用も含まれる。
Q21 グループ企業で一体として公表することは可能か
A グループ企業であっても、各社個別に募集採用を行っている場合においては、中途採用比率についても個社において公表するものとする。
グループ全体で一括して採用を実施しており、各社ごとの中途採用比率を計算することが困難である場合は、グループ全体の採用における正規雇用労働者の中途採用比率で代替することとして差し支えない。
【その他】
Q22 「直近の3事業年度」の考え方如何
A 「直近の3事業年度」とは、公表時点において、事業年度における正規雇用労働者の採用活動が終了し、正規雇用による中途採用者の状況を「見える化」することができる状態となった最新の事業年度を含めた3事業年度を指す。
(例)
【4月1日~3月 31 日が事業年度の企業が 2021 年8月 31 日に公表を行う場合】
2021 年8月 31 日時点において、2021 年度の採用活動が継続中であり、公表が可能であるのが 2018 年度、2019 年度及び 2020 年度である場合は、2018 年度、2019 年度及び 2020 年度の3事業年度分について公表する。(キャッチ画像参照)
Q23 直近3事業年度を一括して計算するのか、事業年度毎に計算するのか
A 事業年度毎に計算するものとする。
Q24 そもそもの採用を行っていない年についてはどのように公表すべきか
A 採用自体を行っていない年については、その旨を記載すること。
Q25 中途採用比率の計算において、端数の処理の取り扱いについて
A 小数点以下第1位を四捨五入した整数値での公表とするが、事業主の判断で小数点以下の値まで公表することは差し支えない。
(例)
事業年度の正規雇用労働者の新規採用者が 46 人の企業において、そのうち正規雇用労働者である中途採用者が 16 名であった場合
16÷46=0.34782… =34.782…% ≒35%を公表値とする
※ 事業主の判断で 34.8%(小数点以下第二位四捨五入)等の公表とすることは差し支えない。
Q26 男女別の中途採用比率を公表する必要はあるか
A 男女計の中途採用比率を公表することで足りるが、事業主の判断で男女別の中途採用比率を公表することは可能である。
Q27 中途採用比率を都道府県労働局等へ提出する書類等に記載することが求められるか
A 都道府県労働局等への提出書類等への記載は求めていない。
Q28 公表をした中途採用比率の数値が誤っていた場合は、どのように対応すればよいか
A 公表した中途採用比率に誤りがある場合は、修正した日及び修正した旨を明らかにして、修正した中途採用比率を速やかに公表すること。
Q29 罰則規定はあるか
A 中途採用比率公表の義務違反に対する罰則規定は設けられていない。
◆正規雇用労働者の中途採用比率の公表Q&A(中途採用比率の公表における解釈事項等について)
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000737271.pdf
◆正規雇用労働者の中途採用比率の公表の概要(リーフレット)
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000737262.pdf
◆正規雇用労働者の中途採用比率の公表(厚労省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/tp120903-1_00001.html