組合員の出資、運営により、「労働者協同組合」という非営利法人を新たに認める労働者協同組合法が12/4の参議院本会議で可決し、成立しました。
3分程度でザックリわかるように解説します。
目的
「組合員が出資し、それぞれの意見を反映して組合の事業が行われ、(中略)持続可能で活力ある地域社会の実現に資することを目的とすること。」
と第1条にあります。
図にも示しましたように株式会社と比較しますと組合員自ら出資し、運営に意見し、組合の事業を行ない、経営者からの命令などは受けないというところが特徴的です。
①NPO法人より簡単な手続きで設立可能
NPO法人を設立するためには、申請→認証→登記という流れとなり、申請から認証までに最大3か月、認証から登記まで最大2週間かかります。一方、労働者協同組合は所轄庁の認証は不要です。
②さまざまな事業を担うことが可能
NPO法人の特定非営利活動が、20の分野に限定されている一方、労働者協同組合は、労働者派遣事業以外は、特に事業分野は限定されていません。
③組合員自ら仕事を創るため、働き甲斐を感じ、主体的に働くことができる
意欲や能力に見合った就労の機会を与えられず、失職する恐怖や疎外感にも悩まされている人たちがいるという問題意識がある中、地域社会の要望に沿った、働きがいを感じられる仕事を住民が自ら創り、主体的に働ける仕組みとして、協同労働という働き方が生まれています。
デメリット
組合員が自ら出資し、組合員の意見を適切に反映し、事業に従事するという前提であることは、経営者が労働者に命令するわけではないため、組合員がそれぞれ好き勝手なことをしてしまう可能性があることを懸念されます。
「組合員の議決権及び選挙権は、出資口数にかかわらず、平等であること」となっていて、意見を取りまとめる際の意思決定の基準が利益ではないため、理念や志が近い組合員で構成しないと統制を取ることが難しいと予想され、組織の在り方が問われるのではないでしょうか。
営利事業
組合は、営利を目的としてその事業を行ってはならない
設立
3人以上の発起人を要する
役員等
組合に役員として理事(3人以上)及び監事(1人以上)を置く
会計
組合は、定款で定める額に達するまでは、毎事業年度の余剰金の10分の1以上を準備金として積み立てなければならない
組合員の契約
組合と組合員との間で労働契約を締結する
組織変更
企業組合又はNPO法人は、施行後3年以内に、総会の議決により、組織を変更し、組合になることができる
所管行政庁
組合についてはその主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事、連合会については厚生労働大臣とする
施行
公布後2年以内に施行
お金を稼がないと生きていけないから、会社に必ず属していなければならない、ということはありません。
・都会に住まなくてもいい
・高給を目指さなくてもいい
・組織のしがらみに縛られたくない
・正規や非正規とか考えるのは嫌だ
・無理やり、好きでもないことを命令されて仕事しなくてもいい
・やりがいを感じて働きたい
・同じ志を持った人と働きたい
・仕事の第一優先は他者貢献だ
・地元で小さなコミュニティで働きたい
・本当に好きなことをして生きていきたい
といったように働き方の価値観が今までよりも多様化していると感じています。
事業内容として、地域社会に根付いた訪問介護や学童保育、農産物販売なども想定されているようです。また、後継者不足に悩む中小企業の事業承継の活用にも期待されています。
これからの日本でうまくこの法律が活用されるといいですね。