今後、雇用調整助成金の特例措置の縮小が検討される中、雇用維持を目的とした出向に対して、助成される「産業雇用安定助成金」が創設され、2月5日に公表されました。出向に対する助成は雇用調整助成金にもありますが「産業雇用安定助成金」は、
①出向元だけではなく、出向先にも助成される
②助成率が高い
③出向初期経費が助成される
といった点で雇用調整助成金より手厚くなっています。
なお、産業雇用安定助成金と雇用調整助成金の双方に該当した場合でも、併給はできませんので、ご注意ください。
以下、詳細を見ていきます。
【対象となる出向】
■対象:雇用調整を目的とする出向(新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動の一時的な縮小(売上高または生産量などが前年比、前々年比、直近1年比で5%以上減少)を余儀なくされた事業主が、雇用の維持を図ることを目的に行う出向)が対象。
■前提:雇用維持を図るための助成のため、出向期間終了後は元の事業所に戻って働くことが前提。
その他、
・出向元と出向先が、親会社と子会社の間の出向でないことや代表取締役が同一人物である企業間の出向でないことなど、資本的・経済的・組織的関連性などからみて独立性が認められること
・出向先で別の人を離職させるなど、玉突き出向を行っていないこと
などの要件があります。
また、出向元事業所または出向先事業所が出向労働者の賃金の全部または一部をそれぞれ負担していることが要件となっていて、出向期間中に出向労働者へ支払う賃金については、出向前の賃金に相当する額であることが必要で具体的には、
出向前の賃金(A)に対する支給対象期(出向後)の賃金(B)の割合が85~115%の範囲内である必要があります。
(支給対象期中の賃金は、臨時に支払われた賃金及び3か月は除きます。また、115%を超えてもベースアップなどの合理的な理由がる場合は支給対応となり得ます。)
【対象事業主】
① 新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動の一時的な縮小を余儀なくされたため、労働者の雇用維持を目的として出向により労働者(雇用保険被保険者)を送り出す事業主(出向元事業主)
② 当該労働者を受け入れる事業主(出向先事業主)
①、②ともに雇用保険適用事業所であること
【対象労働者】
本助成金の「対象労働者」は、助成金を受けようとする出向元事業主に雇用され、本助成金の出向の対象となりうる雇用保険被保険者です。ただし、次の①~③を除きます。
① 出向計画期間の初回の出向した日の前日時点において、出向元事業主に引き続き被保険者として雇用された期間が6か月未満である方
② 解雇を予告されている方、退職願を提出した方、事業主による退職勧奨に応じた方(離職の日の翌日に安定した職業に就くことが明らかな方を除きます)(注:それらの事実が生じた日までの間は対象労働者として扱います)
③ 日雇労働被保険者
【支給対象となる期間】
出向元事業主が、雇用する雇用保険被保険者に対して1か月以上2年以内の期間で実施した出向について支給対象となります。
【支給限度日数】
本助成金を受けようとするとき、同一の雇用保険適用事業所につき一の年度に本助成金の支給対象となる対象労働者500人(1人当たり、一の事業主に雇用された同一の労働者に対する助成金の支給は12か月(365日)を限度とします。当該年度における最初の出向の開始日の前日において当該事業所で雇用する雇用保険被保険者数が500人未満の場合は、その人数分。ただし、その数が10人未満の場合は10人分とする)分が上限となります。
【助成率】
<出向運営経費>
出向元事業主および出向先事業主が負担する賃金、教育訓練および労務管理に関する調整経費など、出向中に要する経費の一部を助成します。
中小企業 | 大企業 | |
出向元が労働者の解雇などを行っていない場合 | 9/10 | 3/4 |
出向元が労働者の解雇などを行っている場合 | 4/5 | 2/3 |
上限額(出向元・出向先の計) | 12,000円/日 |
<出向初期経費>
就業規則や出向契約書の整備費用、出向元事業主が出向に際してあらかじめ行う教育訓練、出向先事業主が出向者を受け入れるための機器や備品の整備などの出向の成立に要する措置を行った場合に助成します。
出向元 | 出向先 | |
助成額 | 各10万円/1人当たり(定額) | |
加算額(※) | 各10万円/1人当たり(定額) |
※出向元事業主が雇用過剰業種の企業や生産性指標要件が一定程度悪化した企業である場合、出向先事業主が労働者を異業種から受け入れる場合について、助成額の加算を行います。
【対象となる経費】
■出向開始日が令和3年1月1日以降の場合、
出向開始日以降の出向運営経費および1月1日以降の出向初期経費が助成対象となります。
■出向開始日が令和3年1月1日より前の場合、
1月1日以降の出向運営経費のみ助成対象となります。
【受給の手続きと流れ】
出向の計画 → 計画届 → 出向の実施 → 支給申請 → 審査・支給決定 → 支給額の振込
【注意点など】
・出向元事業主が出向先事業主の作成した書類を含めて、都道府県労働局に申請します。
・助成金を受給するためには、「産業雇用安定助成金 出向に係る本人同意書」(様式第5号)の必要事項を記載し、出向労働者本人が出向することに同意し、自署する必要があります。
・産業雇用安定センターで出向先のあっせんを無料で行っています。
本助成金の対象となる出向を検討される場合は、ガイドブックをご覧ください。また、参考ページのリンクを貼っておきます。
◆産業雇用安定助成金ガイドブック
https://www.mhlw.go.jp/content/000734455.pdf
◆産業雇用安定助成金リーフレット
https://www.mhlw.go.jp/content/000733293.pdf
◆【厚労省】在籍型出向支援(都道府県別の産業雇用安定センターのリンクがあります)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jigyounushi/page06_00001.html