企業の労務担当者や経営者の皆様、日々の社会保険手続き、お疲れ様です。
資格の取得、喪失、賞与支払届、月額変更届、算定基礎届は、電子申請が可能となり、システム等で処理が比較的スムーズなっていても、給付関連は、いまだに紙の申請書の作成や郵送に煩雑さを感じている方も多いのではないでしょうか。
そんな中、社会保険手続きを大きく変える重要な動きがあります。それが、2026年(令和8年)から始まる「協会けんぽ(全国健康保険協会)の電子申請の本格化」です。
これは単に手続きがオンラインになるだけでなく、デジタル技術を活用して業務そのものを変革する「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の取り組みの一環です。今回は、このDXの概要等を解説します。
1. 協会けんぽが目指す電子申請
現在、健康保険・厚生年金保険の手続きは、主に日本年金機構(年金事務所)を通じて行われています。しかし、協会けんぽが給付業務に関わる特定の届出については、紙による手続きが多く残っていました。
協会けんぽは、この紙による非効率な手続きを解消し、よりスムーズで迅速なサービス提供を目指しています。
2. 電子化される主要な手続き
具体的にどのような手続きが電子化されるのでしょうか。
協会けんぽが特にDXを進める対象として挙げているのは、「給付業務」に関する届出です。
主な電子申請の対象手続き(予定)
- 傷病手当金の支給申請
- 出産手当金の支給申請
- 限度額適用認定証の申請
- 任意継続被保険者に関する手続き
- 資格確認書交付申請書の申請
これらの手続きは、現在、医師や医療機関の証明が必要なものが多く、従業員が書類を用意し、事業主を経由して協会けんぽに提出するという複雑なプロセスを経ています。これが電子化されることで、手続きが大幅に簡素化されることが期待されます。
3. DXによるメリットと実務上の変化
この電子申請の本格化は、単なる「手続きのオンライン化」以上の変革をもたらします。
- 時間とコストの削減:
- 書類の印刷、郵送にかかっていた時間とコストが削減されます。
- 紙の保管スペースや管理の手間も不要になります。
- 迅速な給付:
- 申請から審査、給付決定までの期間が短縮され、従業員はより早く給付金を受け取れるようになります。
- 添付書類の省略・データ連携:
- 現在は紙で提出が必要な「医師の意見書(証明)」などの添付書類について、医療機関や日本年金機構などとのデータ連携により、提出が省略できる可能性が高まります。
このDXの推進により、社労士事務所や企業は、紙をベースとした業務フローから、「データ・オンライン完結型」の業務フローへの転換が求められます。
特に、従業員から申請があった際の「添付書類の収集」や「電子証明書の管理」といった部分で、新たな業務ルールを構築する必要があります。
また、加入者4,000万人とつながるプラットフォームとして、「けんぽアプリ」の開発により、「健診予約」や「デジタルな健康手帳」等、加入者の利便性向上に資する機能も実装する予定のようです。
システムの具体的な内容は公表されていませんが、今後の動向に注目していきましょう。
◆協会けんぽDXについて
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/direction/dai137kai/2025091009.pdf