【派遣労働者の同一労働同一賃金】令和3年一般労働者の賃金水準の公表とコロナによる例外的取扱い【労使協定方式】

今回、派遣労働者の賃金の決定に用いる2つの統計が発表されました。また、あわせて新型コロナウイルス感染症の影響による例外的な対応も発表されました。今年4月からの改正点含めて、制度概要から解説します。

まず派遣労働者の同一労働同一賃金については、令和2年(2020年)4月から派遣元事業主に対して、2つの方式で公正な待遇の確保を義務付けています。

派遣先均等・均衡方式

ひとつは、派遣先均等・均衡方式と呼ばれ、基本給、通勤手当、賞与、福利厚生などの個別の待遇ごとに派遣先の正社員と派遣労働者の

①職務内容(業務内容、責任の程度)
②職務内容・配置の変更範囲(転勤、配置転換の有無・範囲)
が同一であれば、不利な待遇としてはならないことになっています(均等待遇)。

また、上記に当たらない場合でも、

①職務内容
②職務内容・配置の変更範囲
③その他の事情(成果、能力、経験など)
を考慮して不合理な待遇差としては、ならないことになっています。(均衡待遇)

労使協定方式

もうひとつの労使協定方式は、派遣元の過半数労働組合または過半数代表者との間で締結した一定の要件を満たす労使協定に基づき待遇を決定できます。
派遣先の労働条件を確認し、均等や均衡な待遇をしなければならない派遣先均等・均衡方式のハードルは高く、約9割の事業主が労使協定方式を採用しているようです。

ただし、派遣労働者の賃金を一般労働者の賃金額と同等以上にすると労使協定で締結しなければならないことになっています。
一般労働者の賃金額の水準は、厚生労働者が毎年6、7月頃に公表する賃金構造基本統計と職業安定業務統計を活用することになっています。

上記2つの統計が新型コロナウイルス感染症の影響で昨日、ようやく発表されました。
今回、発表された統計を令和3年度(4月から翌年3月)に適用するのですが令和元年の統計によるものです。賃金構造基本統計、職業安定業務統計ともに数値は、昨年(令和元年発表、平成30年統計)より、全体の基準値(平均)は上昇しています。

例えば、昨年、労使協定方式で派遣労働者の賃金を一般労働者の賃金額と同等の賃金を設定した場合、今年発表された統計額が昨年のそれを上回っていれば、令和3年度の賃金額を上げざるを得ません。

コロナの影響を踏まえた例外的な取扱い

しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響により、6~8月の非正規の雇用者数は100万人以上、7、8月の派遣労働者数は10万人以上減少しています。令和3年度に令和元年の数値をそのまま適用すると派遣労働者の雇用への影響が懸念されます。そのため、派遣労働者の雇用維持・確保の観点から労使協定締結の当事者である労使が十分協議できるようにすることが必要ということになりました。

具体的には、
原則は直近の「令和元年(度)の統計調査等」を用います
しかし、例外的な対応として、雇用維持・確保を図ることを目的として、職種・地域ごとに一定の要件を満たし、労使で合意した場合には、「平成30年(度)の統計調査等」を用いることも可能とします

すなわち、令和3年度(令和元年(度)の統計)適用の賃金水準が令和2年度(平成30年(度)の統計)適用の賃金水準より、上昇していても一定の要件を満たせば、令和2年度(平成30年(度)の統計)の賃金水準のまま使用できることになります。

そこで一定の要件というのは、下記のとおりです。


以下の①から④までの全ての要件を満たす場合に限り、一般賃金の額(令和2年度)を労使において選択することも可能であること。なお、④の要件における都道府県労働局への提出方法については、別途通知する。
派遣労働者の雇用維持・確保を図ることを目的とするものであって、その旨を労使協定に明記していること。
労使協定を締結した事業所及び当該事業所の特定の職種・地域において、労使協定締結時点で、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、事業活動を示す指標(職種・地域別)が現に影響を受けており、かつ、当該影響が今後も見込まれるものであること等を具体的に示し、労使で十分に議論を行うこと。例えば、次のイからハまでを用い、議論を行うことが考えられる。
イ 「労使協定を締結した事業所において、労使協定締結時点で、雇用調整助成金の要件(事業活動を示す指標が5%以上減少)を満たしていること」など、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響による事業所全体の事業の縮小状況
ロ 特定の職種・地域におけるこれまでの事業活動を示す指標の動向。
例えば、以下のものが考えられること。
・ 「労働者派遣契約数が、令和2年1月24 日以降、継続的に減少していること」
・ 「労働者派遣契約数が、対前年同月比で継続的に減少していること」
・ 「新規の労働者派遣契約数が、対前年同月比で継続的に減少していること」
ハ ロの動向を踏まえた令和3年度中の労働者派遣契約数等への影響の見込み
労使協定に、一般賃金の額(令和2年度)を適用する旨及びその理由を明確に記載していること。理由については、①の目的及び②の要件で検討した指標を用いた具体的な影響等を記載することとし、主観的・抽象的な理由のみでは認められないこと。
④ ①の要件に係る派遣労働者の雇用維持・確保を図るために講じる対応
策、②の要件に係る事業活動を示す指標の根拠書類及び一般賃金の額(令和2年度)が適用される協定対象派遣労働者数等を、法第23 条第1項及び第2項の規定に基づく事業報告書の提出時に併せて、都道府県労働局に提出すること


 

最後に今回発表されたQ&Aも一部転載しておきます。

労使協定方式に関するQ&A【第3集】( 令和2年 10 月 21 日公表)

1.労使協定の締結

問1-1      令和3年度通達(※)の一般賃金の額が、前年度適用の一般賃金の額より下がった場合、協定対象派遣労働者の賃金を引き下げることは可能か。

※ 令和2年 10 月 20 日付け職発 1020 第3号「令和3年度の「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第 30 条の4第1項第2号イに定める「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額」」等について」


一般賃金の額と同等以上であれば、労働者派遣法第 30 条の4第1項第2号イに直ちに違反するものではないが、非正規雇用労働者の待遇改善という同一労働同一賃金の趣旨及び派遣労働者の長期的なキャリア形成に配慮した雇用管理の実施という労使協定方式の目的にかんがみて、一般賃金の額が下がったことをもって、協定対象派遣労働者の待遇を引き下げる対応は望ましくなく、見直し前の労使協定に定める協定対象派遣労働者の賃金の額を基礎として、協定対象派遣労働者の公正な待遇の確保について労使で十分に議論することが望まれるものである
また、派遣労働者の待遇の引き下げ等、労働条件の変更については、労働契約法の規定に従う必要があるとともに、次の点からも問題となり得ることに留意が必要である。
① 労使協定に定める昇給規定等の内容によっては、協定対象派遣労働者の待遇を引き下げることが当該昇給規定等を遵守していないことになり、法第 30 条の4第1項第2号ロ又は第3号に違反する可能性があること。
② 待遇を引き下げることを目的に、令和2年度の労使協定から局長通達別添1と別添2の選択を恣意的に変更することなどは認められないこと。


問1-2 職種・地域ごとに令和3年度通達の第1の5に定める「一般賃金の額(令和2年度)」(例
外的取扱い)を適用することは可能か。


 令和3年度通達の第1の5に定める「一般賃金の額(令和2年度)」(以下本Q&Aにおいて「例外 的取扱い」という。)については、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による経済・雇用への影響等により、労働者派遣契約数が減少傾向にある職種や地域などにおいて使用されることを想定しているものである。


問1-3  派遣先の状況や派遣先の希望により、個別に例外的取扱いを適用することは可能か。


労使協定方式は、派遣労働者の長期的なキャリア形成に配慮した雇用管理を行うことができるようにすることを目的とした待遇決定方式である。そのため、派遣先の変更を理由として、例外的取扱いの対象にするか否かを変更することは、適当ではない
また、当然のことながら、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による経済・雇用への影響等とは関係なく、待遇を引き下げることを目的として、派遣先ごとに例外的取扱いの対象にするか否かを変更することは、法の趣旨に反するものであり、適当ではない
一方、例外的取扱いの適用の有無を変更しなければ派遣労働者が希望する就業機会を提供できない場合であって当該派遣労働者から合意を得た場合等のやむを得ないと認められる事情がある場合などは、この限りでない。


問1-4       派遣先が、派遣元事業主に例外的取扱いを使用することを希望することは可能か


 例外的取扱いの対象にするか否かは、派遣労働者の納得感や雇用の安定、キャリア形成、個々の派 遣元事業主における新型コロナウイルス感染症の感染拡大による職種・地域への影響等を考慮しながら、派遣労働者の就業の実態をよく知る派遣元事業主の労使に委ねられているものである。このた め、派遣先が「例外的取扱いを使用する派遣元事業主とのみ契約をする」等と派遣元事業主に伝え、受け入れ予定の派遣労働者の例外的取扱いの適用の有無を限定することは、法の趣旨を踏まえると、適当ではない
また、派遣先が、派遣元事業主に例外的取扱いを使用することを希望することが、待遇を引き下げることを目的としている場合には、法第 26 条第 11 項の派遣料金の配慮義務を尽くしたとは解されず、派遣先が指導の対象となり得るものである。


問1-8 令和3年度通達において、例外的取扱いが示されたが、その後の新型コロナウイルス感染症
の雇用への影響等を踏まえ、令和3年度中に当該取扱いが廃止されることはあり得るのか。


 今後の経済動向によっては、令和3年度中に例外的取扱いを廃止することもあり得るものである が、経済動向の状況等を踏まえて、検討していくものと考えている。


問1-9  労使協定を締結する過半数代表者の選出の手続きにおいて、ある労働者を過半数代表者として選出することに信任(賛成)するか否かについて、派遣元事業主(所)が全労働者に確認することとなった。その確認方法として、派遣労働者を含む全ての労働者に対してメールで通知し、メールに対する返信のない者を、メールの内容について信任(賛成)したものとみなす取扱いは認められるか。
また、同様の場合に、返信がない場合は信任(賛成)したものとみなす旨をメールに記載して
いる場合は認められるか。


過半数代表者の選出には、労働者の過半数が選任を支持していることが明確になるような民主的な手続を経ることが必要である。最終的には個別の事例ごとに判断されるものであるが、一般的には、お尋ねのような取扱いは、労働者の過半数が選任を支持していることが必ずしも明確にならないものと考えられる。例えば、返信がなかった労働者について、電話や訪問等により、直接意見を確認する等の措置を講じるべきである。
なお、イントラネット等を用いて、労働者の意思の確認を行う場合も同様である。


2.基本給・賞与・手当等

問2-1  労働者派遣契約を締結する派遣先が海外にある場合に、どの地域指数を選べばよいか。


当分の間、地域指数は全国計「100.0」の数値を用いる取扱いとする。
なお、派遣元事業主が地域指数を選択する際の「派遣先の事業所その他派遣就業の場所」の判断については、令和元年 11 月1日付け「労使協定方式に関するQ&A【第2集】」の問2-2によるものであることに留意すること。


 

◆派遣労働者の同一労働同一賃金(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386_00001.html

 

<同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和3年度適用)>

◆全体版
https://www.mhlw.go.jp/content/000685419.pdf

◆令和元年賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金(時給換算)(局長通達別添1)
https://www.mhlw.go.jp/content/000685358.pdf

◆職業安定業務統計の求人賃金を基準値とした一般基本給・賞与等の額(時給換算)(局長通達別添2)
https://www.mhlw.go.jp/content/000685359.pdf

◆令和元年度職業安定業務統計による地域指数(局長通達別添3)
https://www.mhlw.go.jp/content/000685420.pdf

◆退職手当制度(局長通達別添4)
https://www.mhlw.go.jp/content/000685361.pdf

◆局長通達本文(令和3年度の「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第30条の4第1項第2号イに定める「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額」」等について)
https://www.mhlw.go.jp/content/000685362.pdf

 

<Q&A>

労使協定方式に関するQ&A【第3集】(令和2年10月21日公表)
https://www.mhlw.go.jp/content/000685364.pdf

 

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