幸せな会社の作り方【SDGs時代のウェルビーイング経営の教科書】

今回は書籍を紹介します。

2/18に発売された「幸せな会社の作り方 SDGs時代のウェルビーイング経営の教科書」という本です。

 

「あなたは今、幸せですか?」

 

即答で「はい」と答えられる人がどのくらいいるでしょうか。

 

本書はそんな問いかけからはじまります。

著者の本田幸大さんは、Enjinという東京・大阪を拠点に中小ベンチャー企業・クリニックの採用、ブランディング、広報などの成長支援する会社を15年経営されていています。

最近は、大手企業の倒産・リストラ、定期昇給や年功序列の廃止等、不安定な時代で企業の変化が顕著となっていて、親世代から教えられてきた有名な大学・会社に入ることで一定の幸せを得られるという考え方は、もはや通用しにくくなっているのではないでしょうか。

筆者は、その解決策として、「ウェルビーイング(幸福)」という概念があり、会社経営にも必要であると説きます。

「ウェルビーイング(幸福)」、「ウェルビーイング経営」とは、「個人の経済、健康、人間関係が満たされ、社会の役に立ち生きること」。

会社経営で利益が出ている、有名になった、納税している、雇用を創出している、といったことだけでなく、社員が幸せを感じなければ、本当にうまくいっているといえるのか、社会が繁栄していけるのか、と問うのです。

 

それでは、具体的に何をすべきかというと「自分がしてほしいことは、(人に)まず与えよ」と。

筆者は無宗教者ですが、キリスト教、仏教、イスラム教と多くの宗教が言い方は異なるが同じことを言っているということは普遍的に大切なことであると考えます。

また、与えることが宗教観からだけでなく、脳科学的な側面や生物学的な側面からも幸せを感じると解明されてきている。

人は与えてもらうより、与える方が幸福感を生むのです。

経営者や一部の幹部社員だけが満たされるような状態になってはならない。

人に惜しみなく与える社員、すなわち、ギバー社員は、活力に満ちて、目を輝かせて仕事をしてくれるので、会社を幸せな状態に導いてくれます。

 

過去の失敗と挫折

ただし、筆者の会社は設立からよい状態が続いているわけではなく、創業間もない頃は、離職率が25%もあったそうです。

当時から、良質な人間関係を作るために社員旅行を毎年実施し、費用の半額を会社が負担し、ほとんどの時間を自由時間にして、みんなが集まる食事は、社員の負担はほぼなくして、社員に喜ばれるだろうと思っていたところ、さまざまな不満の声があがったそうです。

また、よかれと思って平日は毎日19時から21時まで全員参加の飲みニュケーションを行っていたそうです。

入社して一週間しかたっていない社員の親御さんから、突然「辞めたい」という電話がかかってくることもあったと過去を振り返っています。

 

あるきっかけで右肩上がりに

徐々に社員も増え、2013年には信頼できるマネージャークラスの人材が5名ほど育ったのを契機に会社の考え方、理念の浸透ができると判断し、採用方針を中途採用から新卒採用に切り替えたのがターニングポイントだったそうです。

真っさらな状態で社会に飛び込んできた新卒社員は、会社の理念や考え方を自分ゴトとして受け入れてくれて、純粋に会社のことが好きになってくれ、会社のファンも増やしてくれました。

さらに「まずやってみる」、「TTP(徹底的にパクる)」という考えを重視し、様々な研修、セミナー、メソッドを実践し、オリジナルの設計に昇華させ、社内に浸透させるということができるようになってきたといいます。

実施されている独自性のある社内制度をいくつか列挙します。

・親孝行休暇
・月曜11時ゆとり出社

・感謝を社内SNSに投稿しあう制度
・毎日20分の昼寝制度
・瞑想室の設置

他にも、おもしろい制度があるので、人事労務担当の方は、参考になるのでしょうか。

社内で本当に必要なものは何かを考えて、導入しているので、ユニークなネーミングになっていて、またその想いも伝わってきます。

 

また、創業当時から社員には物心両面で豊かな人間になって欲しいと思いから、伝え続けてきた言葉をブラッシュアップし、

「社会の役に立つ立派な人間を一人でも多く輩出する」

という企業理念を新たに制定しました。

ホームページや会議、社内行事などで企業理念を何度も口酸っぱく言い続けことで社員の一人一人が企業理念を理解し、さまざまな制度で実践し、経営陣や上司が日々の業務の細部にまで理念を繋げてあげて自然に社員たちが理解できるようになったそうです。

 

また、幸せになるということは、不幸にならないということだから、幸せの邪魔をする「不」を取り除いていけば、よいという考えにたどり着きます。

ひとりひとりが生活に困窮していたり、心身が安定していなかったり、人間関係が悪かったら、他人に与えることはできない。

「経済」、「健康」、「人間関係」の三辺の「不」を取り除いていって、それぞれの幸せ状態を大きくする「幸せトライアングル」という概念を提唱しています。

会社経営の中で「幸せトライアングル」(経済、健康、人間関係)をよい状態にして、人に与えることによって、自分も周りも幸せになることができる。

ギバー社員を増やすことができる。

 

企業理念制定後は、業績も右肩上がりになり、離職率は10%、新卒30人の募集に対して、7000人の応募(求人倍率約230倍)となったそうです。

親孝行休暇取得率も89%といったデータで示すように社員が働きやすく、幸せが感じやすい制度の運用が出来ているそうです。

読みやすい文章でサクッと読めます。ユニークな社内制度も参考になります。心も温まり、人事や労務以外のお仕事の人にもおすすめしたい内容になっています。

 

この本について
読みやすさ
(5.0)
社内制度参考度
(5.0)
おすすめ度
(5.0)