「2026年8月から健康保険証が使えなくなり、病院で10割負担になるのでは?」と不安を感じている方もいるのではないでしょうか。
結論からいうと、2026年8月から一律に医療費が10割負担になるわけではありません。
従来の健康保険証はすでに利用期間を終えており、現在は「マイナ保険証」または「資格確認書」を使って医療機関を受診する仕組みになっています。マイナ保険証を持っていない方でも、有効な資格確認書を提示すれば、これまでどおり年齢や所得に応じた自己負担割合で保険診療を受けられます。
一方、2026年8月頃に資格確認書の有効期限を迎える方や、医療機関の窓口で保険資格を確認できない方は、一時的に医療費の全額を求められる可能性があります。
この記事では、健康保険証をめぐる2026年8月以降の注意点や、10割負担になる可能性があるケース、その際の対処法について、社会保険労務士の視点からわかりやすく解説します。
1. 2026年8月から健康保険証はどうなる?
まず押さえておきたいのは、従来の健康保険証が2026年8月から一斉に使えなくなるわけではないという点です。
従来の健康保険証は、2024年12月2日から新規発行されなくなりました。すでに交付されていた健康保険証についても、記載された有効期限または最長で2025年12月1日までしか使用できない仕組みでした。
そのため、2026年8月以降の受診では、原則として次のいずれかを利用します。
- 健康保険証として利用登録したマイナンバーカード(マイナ保険証)
- 加入している健康保険から交付された資格確認書
一部の資格確認書は有効期限が2026年7月31日などに設定されていることがあります。その場合、2026年8月1日以降は、更新後の資格確認書またはマイナ保険証が必要です。
つまり、「2026年8月からの変更」として注意すべきなのは、従来の健康保険証そのものではなく、現在持っている資格確認書の有効期限です。
マイナ保険証がなくても保険診療を受けられる
マイナンバーカードを持っていない方や、健康保険証としての利用登録をしていない方には、原則として資格確認書が交付されます。
有効な資格確認書を医療機関や薬局の窓口で提示すれば、マイナ保険証がなくても、これまでどおり保険診療を受けられます。
したがって、「マイナ保険証を持っていないと10割負担になる」という理解は正しくありません。
2. 医療費が10割負担になる可能性があるケース
健康保険に加入している方の窓口負担は、通常、年齢や所得などに応じて1割から3割です。
ただし、医療機関がその場で健康保険の加入資格を確認できない場合は、一時的に医療費の全額を支払うよう求められることがあります。
資格確認書の有効期限が切れている
資格確認書には有効期限があります。有効期限を過ぎた資格確認書を提示しても、原則として有効な資格確認書としては使用できません。
特に、有効期限が2026年7月31日となっている場合は、2026年8月1日以降、その資格確認書では受診できなくなります。
受診前に資格確認書の表面を確認し、有効期限が切れていないかを確認しておきましょう。
マイナ保険証も資格確認書も持参していない
医療機関の窓口でマイナ保険証や資格確認書を提示できず、ほかの方法でも保険資格を確認できない場合は、一旦10割分を請求されることがあります。
もっとも、マイナ保険証のカードリーダーに不具合がある場合などは、マイナポータルの資格情報画面、資格情報のお知らせ、過去の受診歴など、別の方法で資格を確認できることがあります。
カードリーダーで読み取れなかっただけで、直ちに10割負担になるとは限りません。まずは受付で、ほかの確認方法を利用できないか尋ねましょう。
転職や退職で保険資格が切り替わった直後
転職、退職、就職、扶養の追加・削除などがあると、加入する健康保険が変わることがあります。
新しい健康保険への加入手続きが行われていても、その情報がオンライン資格確認システムへ反映されるまでに時間がかかる場合があります。
また、退職前の勤務先から交付された資格確認書は、記載された有効期限内であっても、退職日の翌日以降は原則として使用できません。
古い資格確認書を使うと、後日、健康保険が負担した医療費の返還を求められることもあるため注意が必要です。
健康保険の加入手続きが完了していない
退職後に国民健康保険へ加入していない場合や、家族の健康保険の扶養に入る手続きが完了していない場合など、受診日に有効な健康保険資格そのものがないケースもあります。
この場合は、単に書類を忘れただけの場合とは異なり、受診時点の加入状況を確認する必要があります。
3. 10割負担を求められたときの対処法
窓口で10割負担を求められても、健康保険の資格が有効であれば、最終的に全額が自己負担になるとは限りません。
ほかの方法で資格確認できないか尋ねる
マイナ保険証を読み取れない場合は、次のような方法で資格確認ができる可能性があります。
- マイナポータルの資格情報画面を提示する
- マイナンバーカードと「資格情報のお知らせ」を一緒に提示する
- 医療機関がオンライン資格確認システムへ照会する
- 過去の受診歴や患者本人の申立てにより確認する
「資格情報のお知らせ」だけでは、原則として資格確認書の代わりにはなりません。マイナ保険証と組み合わせて使用する書類である点に注意しましょう。
後日、医療機関で精算できるか確認する
一旦10割を支払った場合でも、後日、有効なマイナ保険証や資格確認書を提示することで、医療機関の窓口で差額を返金してもらえることがあります。
精算できる期限や必要書類は医療機関によって異なります。同じ月のうちに手続きが必要な場合もあるため、できるだけ早く受診した医療機関へ確認してください。
加入先の健康保険へ療養費を申請する
医療機関で精算できない場合は、受診日に加入していた健康保険へ「療養費」の支給申請を行います。
審査の結果、保険診療として認められれば、実際に支払った医療費のうち、健康保険が負担する部分が払い戻されます。
ただし、支払った金額のすべてがそのまま払い戻されるとは限りません。健康保険が定める基準で計算され、通常の自己負担分や保険適用外の費用は本人負担となります。
一般的に、申請では次のような書類が必要です。
- 療養費支給申請書
- 医療機関の領収書
- 診療内容が確認できる明細書など
- 振込先口座が確認できるもの
必要書類や申請先は、協会けんぽ、健康保険組合、国民健康保険、後期高齢者医療制度など、加入している制度によって異なります。
4. 2026年8月までに確認しておきたいこと
医療機関の窓口で慌てないためには、受診前に自分が使える資格確認方法を整理しておくことが大切です。
資格確認書の有効期限を確認する
資格確認書を利用している方は、まず券面の有効期限を確認しましょう。
期限が近づいているにもかかわらず、新しい資格確認書が届いていない場合は、加入している健康保険の案内を確認する必要があります。
なお、住所変更の届出がされていないと、資格確認書が旧住所へ送付される可能性があります。引っ越した方は、住所変更の手続きが済んでいるかも確認しましょう。
マイナンバーカードの電子証明書を確認する
マイナ保険証を利用する方は、マイナンバーカード本体だけでなく、電子証明書の有効期限にも注意が必要です。
電子証明書の有効期限が切れた場合でも、一定期間は健康保険証として利用できる経過措置がありますが、ほかの機能は利用できなくなるため、早めに更新手続きを行いましょう。
転職・退職時は新しい資格を確認する
転職や退職をした場合は、以前の勤務先の資格確認書をそのまま使わず、新しい健康保険の加入手続きが完了しているか確認してください。
会社の健康保険に加入する場合は勤務先、国民健康保険に加入する場合は市区町村が手続きの窓口となります。
5. よくある質問
2026年8月から全員が10割負担になりますか?
いいえ。マイナ保険証または有効な資格確認書によって健康保険の資格を確認できれば、通常の自己負担割合で受診できます。
マイナ保険証を持っていないと病院へ行けませんか?
マイナ保険証がなくても、有効な資格確認書を提示すれば保険診療を受けられます。
資格情報のお知らせだけで受診できますか?
資格情報のお知らせは、原則としてそれだけでは資格確認書の代わりになりません。マイナンバーカードと組み合わせて使用します。
10割支払った医療費は必ず戻りますか?
受診日に健康保険の資格があり、保険診療として認められれば、通常は保険給付に相当する金額の払い戻しを受けられます。ただし、保険適用外の費用や通常の自己負担分は戻りません。
6. まとめ
2026年8月から、すべての人が医療費を10割負担するわけではありません。
従来の健康保険証はすでに利用期間を終えており、現在はマイナ保険証または資格確認書で保険資格を確認する仕組みです。
一部の資格確認書は2026年7月31日などに有効期限を迎えるため、資格確認書を利用している方は、受診前に期限を確認しておきましょう。
医療機関で保険資格を確認できなければ、一時的に10割負担を求められる場合があります。ただし、有効な保険資格があれば、医療機関での精算や療養費の申請によって、保険給付分が戻る可能性があります。
資格確認書の有効期限、マイナ保険証の登録状況、転職・退職後の加入状況をあらかじめ確認しておくことが、窓口でのトラブルを防ぐポイントです。

