【メリット検討】今年(令和4年)こそ年末調整のペーパーレス化ができるか?

労務の大きなイベントとして、労働保険料の年度更新、社会保険の手続きが終わると次は大きく期間が空いて年末調整です。

現在、紙の申告書等を使用していて「今年からペーパーレス化」を検討されている方もいらっしゃるでしょう。
すでにご相談を頂いています。

まだ、夏休み前だし、まだまだ先でしょ、と思っても、簡単なスケジュールを逆算して組んでみると早過ぎではないことがわかるのではないでしょうか。

年末調整システム導入スケジュール(仮)
8月   システム導入の範囲、選定、外注先等の検討
9月   稟議・社内調整
10月 システム仕様・連携・作業等の確認
11月 従業員への案内
12月 年末調整

そこで今回は、「年末調整のペーパーレス化」によるメリットを書いてみます。

まず年末調整の具体的な作業は大きく3つのフェーズに分けてみます。

フェーズ①前工程
フェーズ②年末調整計算
フェーズ③後工程

全工程を図示します。
(「楽」や「楽楽」は、システム化したときの個人の意見です。(超主観的))

 

以下、まず簡単に説明しますと
フェーズ①前工程は、扶養控除申告書等の書類の配布と回収です。
フェーズ②年末調整計算は、すでに給与計算システムがあり、年末調整の計算ができれば、そのまま対応可能かと思います。
フェーズ③後工程は、源泉徴収票の従業員への配布、税務署への提出、給与支払報告書の市区町村への提出です。

システムを導入し、最も工数の削減、効率化を図れるのは、「フェーズ①前工程」となりますので、この部分を中心に解説します。

 

【フェーズ①前工程】

そもそも年末調整とは、簡単に言うと1月から給与や賞与から控除していた所得税と年間の所得税との差額を計算することです。
年間の所得税の算出するために本人の申告にもとづいて扶養者の有無や人数、各種保険料控除額等を計算に考慮します。

そこで12/31現在の扶養状況等の確認に「扶養控除等申告書」や「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」を使用し、その年の各種保険料等の確認に「給与所得者の保険料控除申告書」を使用し、住宅借入金の確認に「住宅借入金等特別控除申告書」を使用します。

この書類を従業員への配布・回収に工数がかかってしまっていて、期限までに提出しない人がいたり、記入が間違っていたりすることでさらに時間を費やすことになってしまいます。

そこでシステムの出番となります。
紙の書類は使用せず、クラウドのシステムを使用すれば、工数削減となります。
具体的には多くのシステムが従業員が申告書を作成するというより、PCやスマホを使って質問に回答していくと申告書が自動で作成され、最後にチェックするという流れになっています。
保険料の控除証明書等もスマホのカメラでデータがアップロード可能です。

システムを利用し、ペーパーレス化にすることで主に下記のようなメリットがあります。
(あとで触れますが各社のシステムの使用に違いはありますが一般的な仕様でまとめます。)

・申告書等の印刷、配布、回収、管理が不要
・システムで保険料等が自動計算される(労務担当者、従業員の各々が電卓で計算といった作業が不要)
・申告書の提出状況ステータス一覧が自動作成される(回収状況表などの作成、チェック作業が不要)
・申告書の裏面の記入の説明よりわかりやすい「ヘルプ」機能などがあるため、従業員からの問い合わせが減少

・紙の申告書を使用しないため、並び替え作業が不要
・申告内容はデータ化されるため、紙をめくるような作業がなくなり、検索が早い
・申告書のファイリング、保管場所の確保が不要

 

【フェーズ②年末調整計算】

現在、給与計算をシステムで行っていて、年末調整計算機能があれば、年末調整だけ他のシステムをあえて使用するメリットは少ないでしょう。

ただし、ペーパーレスという観点では、給与明細書、賞与明細書、源泉徴収票のWEB明細機能を使用していない場合は、検討する価値はあるでしょう。

また、現在の給与計算システムにこの後に説明するフェーズ③後工程の機能等がない場合は、システムの変更を検討してもよいかもしれません。

 

【フェーズ③後工程】

年末調整計算後は源泉徴収票の従業員への配布、税務署への提出、給与支払報告書の市区町村への提出です。

源泉徴収票の税務署の提出は、1か所ですが給与支払報告書の市区町村への提出は、従業員の住所地の数だけ必要となります。数か所なら、それほどの手間はかかりませんが、従業員の数が多ければ、それだけ提出する市区町村の数も多くなります。

具体的には、税務署への源泉徴収票の提出は、国税納税システムのe-Tax(イータックス)を使用します。
市町村への給与支払報告書の提出は、地方税ポータルシステムのeLTAX(エルタックス)を使用します。

源泉徴収票や給与支払報告書のデータをCSVにまとめ、上記のシステムに送信します。
下記にCSVの仕様書を貼っておきます。

◆給与支払報告書-源泉徴収票 統一CSVレイアウト【令和02年分~】
https://www.eltax.lta.go.jp/documents/02651

 

データとしては、重複するため、e-TaxとeLTAXの統一フォーマット(CSV)を使用し、eLTAXに送信すれば、e-Taxへのデータを省略することも可能です。

◆給与支払報告書、公的年金等支払報告書及び源泉徴収票の電子的提出の一元化について
https://www.eltax.lta.go.jp/news/00303

 

ペーパーレス化により、封入作業や郵送代もかからなくなります

ただし、eLTAXは、初期設定で市区町村を登録しなければならないため、初年度は、少し工数がかかることはあらかじめ念頭に置いておきましょう。

 

以上、年末調整を3つのフェーズに分けて、ペーパーレス年末調整のメリットをまとめましたがまずは、フェーズ①の前工程はぜひ今年から実施してみてはいかがでしょうか。

次回は、具体的なシステムについても、解説したいと思います。